【書の鑑賞】紙の白と墨の黒、そして印影の朱

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空間芸術

上田桑鳩「書道鑑賞入門」では

「書は平面的な紙や絹に書かれていますが、

 それでもやはり空間を占めているのですから、

 空間芸術に属することになります。」(P.11)

とあります。

空間、というのは立体だけでなく平面にも言えることだ、という趣旨ですが

書は紙に書くだけでなく、石に掘ったり、壷や花瓶に書いたりと

意外と立体である場合もあります。

紙にしても、そうでなくても

与えられた(自分で決めた)二次元、三次元の空間の中で

いかに書くか、ということが重要です。

例えば白い半紙を用意して、

太い線で黒々と紙一杯に書くのと、

細い線で薄墨を使って滲みをきかせた作品にするのでは

空間の使い方が全く違います。

それと同時に印象も全く変わってきます。

あるいは、例えば細く鋭い切ったような線で紙に長い線を引いただけで

その半紙が実物よりも大きく見えることがあります。

空間をうまく使った例です。

だまし絵などでよくある

同じ長さの線が長く見えたり短く見えたりするように、

空間の使い方によって作品は大きくも小さくもなります。

作品の持つ大きさは、空間の使い方によるところが大きいと思われます。

そして、作品の持つ大きさは、小さいより大き方が良い場合が多いです。

作品を鑑賞する場合、

たった一つの作品ではなくて、二つ以上の作品が並んで展示してある時、

その紙の大きさが同じだったら、作品から受ける印象が

二つ同じ大きさかどうか、考えてみてください。

そうすると、同じ紙に書いたものであっても

空間の取り方によって大きくも小さくも見えることが

きっと見えてくるはずです。

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